松尾芭蕉
秋
秋風や桐に動てつたの霜
稲こきの姥もめでたし菊の花
七株の萩の千本や星の秋
三日月に地はおぼろ也蕎麦の花
芭蕉葉を柱にかけん庵の月
名月や門に指くる潮頭
なでしこの暑さわするる野菊かな
きりさめの空をふようの天気かな
青くても有べき物を唐辛子
秋に添て行ばや末は小枩川
行穐のなをたのもしや青蜜柑
初霜や菊冷初る腰の綿
高水に星も旅寝や岩の上
しら露もこぼさぬ萩のうねり哉
初茸やまだ日数へぬ秋の露
蕣や昼は錠おろす門の垣
蕣や是も又我が友ならず
なまぐさし小なぎが上の鮠の膓
夏かけて名月あつきすずみ哉
十六夜はわづかに闇の初哉
秋風に折て悲しき桑の杖
みしやその七日は墓の三日の月
入月の跡は机の四隅哉
老の名の有共しらで四十から
影待や菊の香のする豆腐串