盃に三つの名をのむこよひかな
東にしあはれさひとつ秋の風
名月や池をめぐりて夜もすがら
もの一我がよはかろきひさご哉
あけゆくや二十七夜も三かの月
いなづまを手にとる闇の紙燭哉
蕣は下手のかくさへ哀也
寺に寝て誠がほなる月見哉
此松のみばへせし代や神の秋
かりかけしたづらのつるやさとの秋
賤のこやいね摺かけて月をみる
いものはや月待つさとの焼ばたけ
萩原や一よはやどせ山のいぬ
蓑虫のおとを聞に来よ艸の庵
起あがる菊ほのか也水のあと
痩ながらわりなき菊のつぼみ哉
たびにあきてけふ幾日やら秋の風
あの雲は稲妻を待たより哉
何事の見たてにも似ず三かの月
よき家や雀よろこぶ背戸の粟
はつ穐や海も青田の一みどり
蓮池や折らで其まま玉まつり
刈あとや早稲かたがたの鴫の声
粟稗にとぼしくもあらず草の庵