月の鏡小春にみるや目正月
時雨をやもどかしがりて松の雪
しほれふすや世はさかさまの雪の竹
霜枯に咲は辛気の花野哉
霰まじる帷子雪はこもんかな
波の花と雪もや水にかえり花
成にけりなりにけり迄年の暮
行雲や犬の欠尿むらしぐれ
一時雨礫や降て小石川
霜を着て風を敷寝の捨子哉
白炭やかの浦嶋が老の箱
あらなんともなやきのふは過てふくと汁
塩にしてもいざことづてん都鳥
わすれ草菜飯につまん年の暮
今朝の雪根深を薗の枝折哉
かなしまむや墨子芹焼を見ても猶
小野炭や手習ふ人の灰ぜせり
けし炭に薪わる音かをののおく
いづく霽傘を手にさげて帰る僧
草の戸に茶をこの葉かくあらし哉
櫓の声波ヲうつて腸氷ル夜やなみだ
雪の朝独り干鮭を噛得タリ
石枯て水しぼめるや冬もなし