和歌と俳句

松尾芭蕉

月の鏡小春にみるや目正月

時雨をやもどかしがりて松の

しほれふすや世はさかさまのの竹

霜枯に咲は辛気の花野哉

まじる帷子雪はこもんかな

波の花ともや水にかえり花

成にけりなりにけり迄年の暮

行雲や犬の欠尿むらしぐれ

時雨礫や降て小石川

を着て風を敷寝の捨子哉

富士蘆生が夢をつかせたり

白炭やかの浦嶋が老の箱

あらなんともなやきのふは過てふくと汁

塩にしてもいざことづてん都鳥

わすれ草菜飯につまん年の暮

今朝の根深を薗の枝折哉

かなしまむや墨子芹焼を見ても猶

小野や手習ふ人の灰ぜせり

けし炭に薪わる音かをののおく

いづく傘を手にさげて帰る僧

草の戸に茶をこの葉かくあらし哉

櫓の声波ヲうつて腸氷ル夜やなみだ

の朝独り干鮭を噛得タリ

石枯て水しぼめるやもなし