和歌と俳句

高知

旅五日目土佐へ入るより更衣 悌二郎

アマリリス土佐闘犬を飼へる門 悌二郎

静か天守の人語聞えつつ たかし

主客豪酒春灯の下皿鉢あり たかし

わが終わり銀河の中に身を投げん 虚子

秋潮の暗きに紅き海月棲む たかし

入海の更に入江の里の秋 たかし

秋潮の入江の辻に舟かかる たかし

菊市の町筋城に尽きてあり たかし

菊市の菊買ひ提げて城さやか たかし

島人は凪といへども土用波 青畝

土用波白緑と映え土佐涼し 青畝

浦戸

春潮や袋の如き浦戸湾 たかし

玉と呼び絹と称ふ島波うらら たかし

長閑さにまだゐる鴨や浦戸湾 たかし

海底に珊瑚花咲く鯊を釣る 虚子

夕鵙の唯一陣や湾の中 たかし

室戸岬

竜巻に添うて虹立つ室戸崎 虚子

強き日に燃え落つ椿室戸岬 たかし

春潮の底とどろきの淋しさよ たかし

春月を濡らす怒濤や室戸岬 たかし

豆咲いて室戸の春日焼くごとく たかし

べんたうのうどの煮つけも薄暑かな 万太郎

岩群れてひたすら群れて薄暑かな 万太郎

この町や水にこと缺くあやめ黄に 万太郎

火蛾去れり岬ホテルの午前二時 万太郎

薫風や岩にあづけし杖と笠 万太郎

寒鴉とぶ室戸岬巌ばかりの上 誓子

逆遍路室戸の岬をひとり過ぐ 誓子

冬の巌この身を寄せしあともなし 多佳子

冬濤の壁にぶつかる陸の涯 多佳子

埼に立ちおのれはためき冬遍路 多佳子

孤りは常会へば二人の遍路にて 多佳子

龍舌蘭遍路の影の折れ折れる 多佳子

足摺岬

黒潮の夜長の叫び今か聴く たかし

宵闇に漁火鶴翼の陣を張り たかし

足摺は五つ崎ある秋天下 たかし

足摺ゆ室戸見ゆ日や冬近し たかし

濤来り冬雲来る岬に立つ たかし

冬濤の左右に走せ入る岬に立つ たかし

足摺の五つ崎埼うち時雨れ たかし

時雨雲散り乱りつつみ埼照る たかし

遠海の遠埼晴れて時雨ふる たかし

りんりんと海坂張つて春の岬 多佳子

海の鴉椿林の内部知る 多佳子

春月に水飢饉なる足摺よ 誓子

岩は皆渦潮しろし十三夜 秋櫻子

岬端の麦秋わかき月かかげ 悌二郎

また同じ枯れ切通しこの道ゆく 多佳子

冬の旅日当たればそこに立ちどまる 多佳子