主客豪酒春灯の下皿鉢あり たかし
わが終わり銀河の中に身を投げん 虚子
秋潮の暗きに紅き海月棲む たかし
入海の更に入江の里の秋 たかし
秋潮の入江の辻に舟かかる たかし
菊市の町筋城に尽きてあり たかし
菊市の菊買ひ提げて城さやか たかし
海底に珊瑚花咲く鯊を釣る 虚子
夕鵙の唯一陣や湾の中 たかし
竜巻に添うて虹立つ室戸崎 虚子
春潮の底とどろきの淋しさよ たかし
豆咲いて室戸の春日焼くごとく たかし
べんたうのうどの煮つけも薄暑かな 万太郎
岩群れてひたすら群れて薄暑かな 万太郎
火蛾去れり岬ホテルの午前二時 万太郎
薫風や岩にあづけし杖と笠 万太郎
寒鴉とぶ室戸岬巌ばかりの上 誓子
逆遍路室戸の岬をひとり過ぐ 誓子
冬の巌この身を寄せしあともなし 多佳子
冬濤の壁にぶつかる陸の涯 多佳子
埼に立ちおのれはためき冬遍路 多佳子
孤りは常会へば二人の遍路にて 多佳子
龍舌蘭遍路の影の折れ折れる 多佳子
黒潮の夜長の叫び今か聴く たかし
宵闇に漁火鶴翼の陣を張り たかし
足摺は五つ崎ある秋天下 たかし
足摺ゆ室戸見ゆ日や冬近し たかし
濤来り冬雲来る岬に立つ たかし
冬濤の左右に走せ入る岬に立つ たかし
時雨雲散り乱りつつみ埼照る たかし
遠海の遠埼晴れて時雨ふる たかし
りんりんと海坂張つて春の岬 多佳子
海の鴉椿林の内部知る 多佳子
春月に水飢饉なる足摺よ 誓子
また同じ枯れ切通しこの道ゆく 多佳子
冬の旅日当たればそこに立ちどまる 多佳子