和歌と俳句

高松

炬燵出て早あしもとの野川哉 蕪村

朝寝して玉藻城見ゆ旅の果 秋櫻子

枇杷買ふて舷梯のぼる夜の雨 多佳子

仄かにも渦ながれゆく夜光虫 多佳子

大名・明治三度び代かはる林泉紅葉 草田男

綾なして梅雨の雨脚紫雲山 立子

屋島

駕籠屋呼ぶ太鼓叩くや草紅葉 虚子

お遍路やひた下りゆく裏屋島 野風呂

貞応の鐘ついて見よ春の昼 野風呂

旗かざし玉藻の浦の遊び舟 風生

歴史悲し聞いては忘る老の秋 虚子

花過ぎし古雪と見つ雪の庭 秋櫻子

わたり鳥しづめる谷は屋島かも 秋櫻子

秋行くとオリーブ林の銀の風 波郷

もののふの誉の岩に鯊ひとつ 秋櫻子

歴史は胸裡に冬の屋島に木々深し 草田男

生死興亡秋展望台ただ回る 悌二郎

小豆島

頭上の岩をめぐるや秋の雲 子規

のどかさや豆のやうなる小豆島 子規

眼の前魚がとんで見せる島の夕陽に来て居る 放哉

都のはやりうたうたつて島のあめ売り 放哉

小さい島に住み島の雪 放哉

島広しどこかで見たる菊畑 立子

春日没り塩田昏るる身のまはり 多佳子

孤り生し人の墓なり蟻ひとつ 秋櫻子

燕飛ぶ風やオリーブの雨こぼれ 秋櫻子

蛙つぶやく輪塔大空放哉居士 秋櫻子

林檎咲き海また白き雨のあと

鳴く雲雀林檎の花影畑に満つ

宿をとる春の月夜の小豆島 立子

巡礼の島のぐるりの砂の浜 誓子