松山や秋より高き天守閣 子規
秋高し鳶舞ひ沈む城の上 子規
巣の雀らしや出で入る天守閣 悌二郎
夕桜城の石崖裾濃なる 草田男
炎天の城や雀の嘴光る 草田男
石崖の片陰沿ひの幾角を 草田男
稲田照り真向きし城へ直帰る 波郷
兄と会ひつ城の石垣の秋おどろ 波郷
団栗を混へし木々ぞ城を隠す 波郷
茂吉
城山に高くのぼりて日にきらふ古ぐに伊予はわれのまにまに
藍に白を点じぬ城ある鰯雲 草田男
城庇やや散状に夏日直下 草田男
城攻める濃緑の中鶏鳴けり 三鬼
天守閣の四望に四大黄麦原 三鬼
子規
見渡せばはるかの沖のもろ舟の帆にふく風ぞ涼しかりける
巨き犬立ち迎へたる五月闇 秋櫻子
師と泊る夜寒の宿の閧へだて 上村占魚
松蟲の市なかに鳴く道後の湯 上村占魚
石手寺へまはれば春の日暮れたり 子規
通夜堂の前に粟干す日向かな 子規
石手寺の廻廊涼し山の蝶 立子