婆手打つげんげ田あれば河あれば
ひげの鯉に噴出烈し五月の水
溝川に砂鉄きらめき五月来ぬ
青梅びつしり女と女手をつなぎ
初蝉の唄絶えしまま羊歯の国
熊ん蜂狂い藤房明日は果つ
峡畑に寸の農婦となり耕す
風青し古ふぐひすの歎きぶし
つつじ赤く白くて鳶の恋高し
初蝉や松を愛して雷死にし
椎匂う強烈な闇誰かを抱く
臀丸く葱坊主よりよるべなし
子が育つ青蔦ひたと葉を重ね
薔薇の家犬が先ず死に老女死す
薔薇の家かつら外れし老女の死
飛ぶものは白くて強し柳絮と蝶
青野に吹く鹿寄せ喇叭貸し給え
突き上げて仔鹿乳呑む緑の森
乳房吸う仔鹿せせらぎ吸う母鹿
遠足隊わめき五月の森とび出す
薬師寺の尻切れとかげ水飲むよ
白砂眩し盲鑑真は奥の奥に