信あれば是も飛梅の奇特かな 貞徳
山吹や葉に花に葉に花に葉に 太祇
旅人も礎石も雪も降り昏るる しづの女
山上憶良ぞ棲みし蓬萌ゆ しづの女
蓬萌ゆ憶良旅人に亦吾に しづの女
蓬摘む古址の詩を恋ひ人を恋ひ しづの女
万葉の男摘みけむ蓬萌ゆ しづの女
茅萌え芝青み礎石にかしづける しづの女
茅に膝し巨き礎石の襞に触る しづの女
都府楼趾菜殻焼く灰降ることよ 茅舎
都府楼趾より遠足子がやがやと 朱鳥
風悲し枯草ふれて礎石鳴る 朱鳥
吹き降りに薊咲く野ぞかたむける 秋櫻子
薊咲き幾とせの色草にしむ 秋櫻子
秋の灯に照らし出す仏皆観世音 虚子
鐘や響かん昼風の虻うなり 亜浪
白秋
麦の秋観世音寺を罷で来て都府楼の跡は遠からなくに
露の夜の仏に不意に蝋燭火 禅寺洞
菊の香のくらき仏に灯を献ず 久女
月光にこだます鐘をつきにけり 久女
菜殻火は観世音寺を焼かざるや 茅舎
菜殻火の襲へる観世音寺かな 茅舎
五菩薩のみな観世音若葉冷 青邨
田掻牛観世音寺の鐘を聞く 青邨
田掻牛観世音寺の前を曳く 秋櫻子
新緑の映るにあらず鐘蒼し 秋櫻子
水仙に手相をたれて観世音 朱鳥
歯朶たけて塔の心礎をかくさざる 風生