和歌と俳句

川端茅舎

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大旱天智天皇の「秋の田」も

炎天に青淵の風ふと立ちぬ

青淵の上に御田の旱かな

青淵に翡翠一点かくれなし

大旱淵は瀬を吸ひ止まざりき

の瀬を淵へ筏は出て卍

鐘楼に上りて菜殻火を見るも

清浄と夕菜殻火も鐘の音

菜殻火の襲へる観世音寺かな

菜殻火の映れる牛の慈眼かな

菜殻焼く火柱負ひぬ牛車

夏薊礎石渦巻くおそろしき

アセチレン瓦斯の手入れよ月見草

緑蔭に黒猫の目のかつと金

籘椅子や心は古典に眼は薔薇に

燎原の火か筑紫野の菜殻火か

筑紫野の菜殻の聖火見に来たり

菜殻火は観世音寺を焼かざるや

都府楼趾菜殻焼く灰の降ることよ

渓流も秋月城址栗の花

笹粽ほどきほどきて相別れ

噴水に雷奔り電馳せれども

日輪を襲ふ雷雲薔薇の園

噴水へ蜘蛛何故ぞこれの糸

廓然と薔薇紅白にちりわかれ