和歌と俳句

籐椅子

客はみな右舷日蔭の籐椅子に 虚子

籐椅子や青松毬を夕眺め 橙黄子

甲板にいつも空き居る籐椅子かな 虚子

海風に吹きゐざりたる籐椅子かな 虚子

籐椅子に浅く掛けたる夫人かな 草城

籐椅子やデッキゴルフのチャンピオン 草城

籐椅子や孤影横たふ夜のデッキ 草城

すはだかに熟睡したる籐椅子かな 蛇笏

籐椅子や寺町なれば帰鴉の夕 爽雨

洗ひ髪かはく間月の籘椅子に 久女

籘椅子に看とり疲れや濃紫陽花 久女

浜千鳥日々来る庭や籐寝椅子 石鼎

戦場ヶ原の真中に籐椅子置く 虚子

籐椅子にオレンヂエード待つ間あり 草城

この船のながき船路の籐寝椅子 波津女

籐椅子に暮ゆく高嶺みてゐたり 

籐椅子や海の傾き壁をなす 誓子

両舷の景相似たり籐寝椅子 波津女

籐椅子に学をさびしみ重ぬる夜 三鬼

一碧の水平線へ籐寝椅子 鳳作

籐椅子にあれば草木花鳥来 虚子

安南に日は落ちてゆく籘椅子に 青邨

籘椅子に掛けたる人の早や静か 立子

籘椅子や心は古典に眼は薔薇に 茅舎

籐椅子のつくろひあるはゆかしくて 風生

籐椅子や季節めぐりてきたりけり 杞陽

用ふれば古籐椅子も用を為す 虚子

籐椅子や友若ければその妻も 

籐椅子のきしみはばかり掛けてをり 立子

二つある籐椅子に掛け替へても見 虚子

夕月のひかりほぐれし籐椅子かな 万太郎

おもひでとともに古りたる籐椅子かな 万太郎

籐椅子の人の無言を吾も守る たかし

籐椅子にふと母懐ふゆゑ知らず 風生

杖一竿洋書若干古籐椅子 風生

籐椅子が四つ四人姉妹会ふ 多佳子

一生の疲れのどつと籐椅子に 風生

籐椅子に光陰過ぐる意味なき意味 風生