和歌と俳句

篠原鳳作

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草苺あかきをみればはは恋ひし

一碧の水平線へ籐寝椅子

浪のりの白き疲れによこたはる

浪のりの深き疲れに睡も白く

海焼の手足と我とひるねざめ

満天の星に旅ゆくマストあり

船窓に水平線のあらきシーソー

しんしんと肺碧きまで海のたび

幾日はも青うなばらの円心に

甲板と水平線のあらきシーソー

月のかげ塑像の線をながれゐる

月光のおもたからずや長き髪

そそぎゐる月の光の音ありや

窓に入る月の塑像壺をかつぎ

背の線かひなの線の青月夜

闇涼し蒼き舞台のまはる時

稲妻のあをき翼ぞ玻璃打てり

稲妻の巨き翼ぞ嶺を打てる

鉄骨に夜々の星座の形正し

鉄骨に忘れたやうな月の虧

紺青の空と触れゐて日向ぼこ

手に足に青空染むと日向ぼこ

一碧の空に横たふ日南ぼこ

莨持つ指の冬陽をたのしめり

園のもの黄ばむと莨輪に吹ける

新刊と秋の空ありたばこ吹く

秋の陽に心底酔へりパイプ手に

雪の夜はピアノ鳴りいづおのづから

雪あかり昏れゆくピアノ弾き澄める

氷雨する空へネオンの咲きのぼる

除夜たぬし警笛とほく更くるとき

廻転椅子くるりくるりと除夜ふくる

年あけぬネオンサインのなきがらに

いぶせき陽落つとネオンはなかぞらに

凍て空にネオンの塔は画きやまず

凍て空にネオンの蛇のつるつると

凩の空にネオンのはびこれる

凍て空のネオンまはれば人波も

はてしなき闇がネオンにみぞるるよ

昼深きネオンの骸にしぐれゐる