和歌と俳句

篠原鳳作

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警笛に頭光に氷雨降りまどふ

冬木さへネオンの色に立ち並び

蒼穹にまなこつかれて鋲打てる

一塊の光線となりて働けり

鋲を打つ音日輪をくもらしぬ

鳴りひびく鉄骨の上を脚わたる

鉄骨の影の基盤をトロ走る

鉄はこぶ人の体臭のゆきかへる

瞳にいたき光りを踏みて働ける

歪みたる顔のかなしく鉄はこぶ

たくましき光にめしひ鉄はこぶ

鉄骨の影切る地に坐して食ふ

鋲打ちてつかれし腰の地に憩ふ

青空ゆ下り来し顔が梅干はめり

疲れたる瞳に青空の綾燃ゆる

楽澄めり椰子の瑞葉は影かざし

楽澄めりうつむける人蒼々と

デスマスク蒼くうかめり楽澄めば

楽きけり塑像の如き額しろく

起重機の轟音蒼穹をくづすべく

起重機の巨躯青空を圧しめぐる

起重機にもの食ませゐる人小さき

起重機の旋回我も蒼穹もなく

機銃化を動かす顔のしかと剛き

ゴムのはのにぶきひかりは楽に垂り

楽きけり塑像の如き人等ゐて

楽きくと影絵の如き国にあり

昇降機吸はれゆきたる坑にほふ

昇降機吸はれし闇のむらさきに

地の底ゆせりくるロープはてしなく

昇降機うなじの線のこみあへる

昇降機脚にまつはる我が子呂と

旅ゆくと白き塑像の荷をつくり

白たへの塑像いだきて海の旅

鴎愛し海の碧さに身を細り

口笛を吹けども鴎集らざりき

碧空に鋭声つづりてゆく鳥よ

楽たのし饐ゆるマンゴの香もありて

楽迅し翅に眼のある蛾も来り