ほしいままおのれをなげく時もなく
「疲れたり故に我在り」と思ふ瞬間
我も亦ラツシユアワーのうたかたか
我が机ひかり憂ふる壁のもと
夜となれば神秘の眇灯る壁
くしけづる君がなげきのこもる壁
古き代の呪文の釘のきしむ壁
幽き壁夜々のまぼろし刻むべく
にぎりしめにぎりしめし掌に何もなき
睡りゐるその掌のちささ吾がめづる
赤ん坊を泣かしをくべく青きたたみ
泣きじやくる赤ん坊薊の花になれ
赤ん坊の蹠まつかに泣きじやくる
太陽に襁褓かかげて我が家とす
赤ん坊を移しては掃く風の二た間
指しやぶる音すきずきと白き蚊帳
目覚めては涼風をける足まろし
太陽と赤ん坊のものひらりひらり
赤ん坊にゴム靴にほふ父帰宅
かはほりは月夜の襁褓嗅ぎました