和歌と俳句

苺畑蟻のいとなみ繁くなりぬ 秋櫻子

蟻の道白雲木の花降れり 秋櫻子

足跡を蟻うろたへてわたりけり 立子

大いなる落葉の下へ蟻のみち 立子

山のいちにち蟻もあるいてゐる 山頭火

おびき出す砂糖の蟻の黒だかり 久女

ひとりをれば蟻のみちつづいてくる 山頭火

炎天のはてもなむ蟻の行列 山頭火

紙の皮膚活字の蟻のあてどなし 三鬼

御成とぞ蟻の道だになかりけり 青畝

蟻よバラを登りつめても陽が遠い 鳳作

蟻の道まことしやかに曲りたる 青畝

夜の蟻迷へるものは弧を描く 草田男

穴に落ちし蟻あたふたと早や出でし 立子

蟻をみてものほろぶことをおもひをる 槐太

つひに戦死一匹の蟻ゆけどゆけど 楸邨

蝿打てば即ち蟻の罷り出づ 茅舎

蟻の列いま粛然と夕焼けぬ 茅舎

朝焼や畳の端を蟻の列 楸邨

梅雨の夜の蟻卓に来て背を曲ぐる 楸邨

玉章や力めわすれて蟻の列 友二

蟻の道墓行く道と眩く 友二

畳ゆく蟻見て息をしづかにす 誓子

蟻を掌の裏や表に遊ばしむ 誓子

影曳いて月夜の蟻のゆくところ 楸邨

山蟻の土くれなどは軽く越ゆ 綾子

石肌を流るる如く蟻二つ 杞陽

戦へる中のひとつに蟻動く 占魚