初夏の日に手足ひからせ生きむとす
けふの静臥初夏の繭雲閉ぢわたる
巌にゐて蠅も鉄色よき五月
この稚子に五月の清暑復来る
梅雨のあと蟻すれちがひなほ湿地
指さきにさし来る夏の暾を拝む
樹の幹に隠れて既に暾は暑き
夏雲の下なる墓域生きて購ふ
半天に雲たのみなき峰つくる
夏川の淵の砂浜あはれなる
嘴のべて鵜か炎天もまたさびし
夕焼は陸にも海にも照りあまる
畳ゆく蟻見て息をしづかにす
蝉のこゑ樹林をながく涵しける
蝉声を驟雨の樹樹になほ絶たず
子のいのち眇たり空蝉葉にすがる
日常の眼鏡の反射緑なす
海兵生薔薇より前に服白し
あぢさゐの黄なるを嘆くにもあらず
緑蔭の新聞ながく顔隠す
著莪の弁著き一日を回想す
日月を行かしめ著莪は常蔭なる
われら栖む家か向日葵夜に立てり
ちちろ鳴き厨妻吾に何つくる
露更けし星座ぎつしり死すべからず
貝殻の露団団と浪の際
波打に砂丘に貝殻露凝らす