和歌と俳句

えごの花

えごの花かかりて蜘蛛の絲見えず たかし

白秋
水口の えごのひと木の 群花は 田を植ゑそめて いよよすがしさ

えごの花こぼるゝ中へ舟を入れ 青邨

えごの花遠くへ流れ来てをりぬ 青邨

えごの花ながれ溜ればにほひけり 草田男

沈みたるえごや花びら透きとほり 草田男

浮草にのりてたまりぬえごの花 青邨

えごの花一点白し流れゆく 青邨

蛙早流転の調べえごの花 茅舎

昼蛙ラ行幽かにえごの花 茅舎

白秋
陽にまがふ何かしらけし眺めには若葉もわかずえごの鈴花

白秋
花しろきえごの木のまを日ごもりと手斧は音に楽しむごとし

細道へ崖よりこぼれえごの花 茅舎

多羅の葉にこぼれてえごの花盛り 茅舎

朝森はえご匂ふかも療養所 波郷

えごの花一切放下なし得るや 波郷

えごの花覗く松ヶ枝階なす 波郷

えごの花の香をよぎりたる配膳車 波郷

えごの花こぼるるいつも眼をそれて 爽雨

翡翠の鋭目据ゑゐたりえごの花 青畝

寄せ笛に巣鳥はひそむえごの花 秋櫻子

山鳩の機嫌の歌よえごの花 波郷

病む吾の意気地なき日やえごの花 波郷

えご咲けば父見舞ふ母を憶ひ出でむ 波郷

えごの花めぐりて園のもとの径 悌二郎

忘れ得ぬ人ある倖せえごの花 

見舞びとに教へむえごの花遠し 波郷