和歌と俳句

六月

六月を綺麗な風の吹くことよ 子規

晶子
六月を うしと思ひぬ にはか雨 麦の穂にふる らうがはしさに

晶子
円山の 杉のみどりの 蔭に吹く 真葛が原の 六月のかぜ

牧水
六月の 山のゆふべに 雨晴れぬ 木の間にかなし 日のながれたる

牧水
友はみな 兄の如くも 思はれて 甘えまほしき 六月となる

晶子
寒きまで 青き道かな 六月の 橡の林の 青き道かな

晶子
六月の 木立とがれり ためらはず 伸びたるものは ここちよきかな

晶子
六月は 酒を注ぐや 香を撒くや 春にまさりて 心ときめく

晶子
太陽の もとに物みな 汗かきて 力を出だす 若き六月

六月や白雲色を磨ぎすまし 石鼎

晶子
六月や 長十郎と 云ふ梨の 並木に立ちて 明きみちかな

六月や日光はよき杉並木 喜舟

六月の氷菓一盞の別れかな 草田男

炭燃して六月寒き海に耐ふ かな女

六月の懈怠ランチは河を駛る 桃史

六月の木曾駒ケ嶽箱庭に かな女

風六月教師と柱暦煽る 草田男

六月馬は白菱形を額に帯び 草田男

六月の日の出かぐはし駒場町 波郷

六月の雨さだめなき火桶かな 波郷

六月やかぜのまにまに市の音 波郷

欅越しひかりつづける六月野 林火

六月野子のために馬鈴薯買ひにゆく 林火

六月の女坐れる荒筵 波郷

六月のゆふべや肩に道具箱 誓子

六月の星出でそめぬ砂利置場 誓子

六月風墓のうしろも影はなし 林火

六月や牛の鼻筋白くして 林火

六月や卓上に置く鮪鮨 石鼎

六月や啄木の歌当用日記に 石鼎

六月や椎茸煮出汁の御嶽蕎麦 万太郎

六月や寝ざめかすめし鳩のかげ 万太郎

六月の赤き虫とぶ深山寺 不死男

脱衣室六月巨き冨士を窓 悌二郎

熔接光六月の野のまっぴるま 悌二郎

六月や湖は見えねど湖の宿 悌二郎

六月の海みてまなこ養へり 双魚