大夕焼学童のゐぬ街となる
六月野子のために馬鈴薯買ひにゆく
仏壇のともされてゐる夕立かな
夕焼雲たてがみひかる馬の群
夏雲高し子をつれて海へ旅立つ日
大いなる虹に向ひてセルにゐぬ
桐咲けばサーカスあほぞらのみ鮮らし
麦は穂にくもれど光り失はず
麦秋やわれにかかはる他人の文
こころひもじき月日の中に桐咲きぬ
とほるときこどものをりて薔薇の門
蝸牛虹は朱ケのみのこしけり
とりいだす苺の紅の箱に滲む
蛍籠秒音たかくひびきけり
どくだみの花いきいきと風雨かな
海の日に虹の生るるセルの肩
枇杷熟れし便り夕焼の中に読む
向日葵や椅子はそれぞれ海に向く
樹に蜥蜴地を震はせて土用波
日は宙にしづかなものに茗荷の子
橋の上のまだ夕焼けて月見草
大風の星ひしめくや金魚買ふ
潮浴みし午後はトマトにくもりけり
炎天の日ざしのふかく麻に澄む