和歌と俳句

大野林火

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

大夕焼学童のゐぬ街となる

六月野子のために馬鈴薯買ひにゆく

仏壇のともされてゐる夕立かな

夕焼雲たてがみひかる馬の群

夏雲高し子をつれて海へ旅立つ日

大いなる虹に向ひてセルにゐぬ

咲けばサーカスあほぞらのみ鮮らし

は穂にくもれど光り失はず

麦秋やわれにかかはる他人の文

こころひもじき月日の中に咲きぬ

とほるときこどものをりて薔薇の門

蝸牛虹は朱ケのみのこしけり

とりいだすの紅の箱に滲む

蛍籠秒音たかくひびきけり

どくだみの花いきいきと風雨かな

海の日に虹の生るるセルの肩

枇杷熟れし便り夕焼の中に読む

向日葵や椅子はそれぞれ海に向く

樹に蜥蜴地を震はせて土用波

日は宙にしづかなものに茗荷の子

橋の上のまだ夕焼けて月見草

大風の星ひしめくや金魚買ふ

潮浴みし午後はトマトにくもりけり

炎天の日ざしのふかく麻に澄む