和歌と俳句

大野林火

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向日葵や海に疲れてねむる子ら

雨後の村蝉音は山へしりぞきぬ

蚊の声の夕焼は濃くなりまさり

避暑の子のゆふかぜ追ふごとく遊ぶ

胡麻の花夕日隈なくなりにけり

夏蚕飼夜は浪音に籠りけり

夜光虫ふなばた冷えてきたりけり

蝉しぐれ森深く海入りこめる

夜光蟲岩を蝕ばむごとく燃ゆ

濤を聴く一点の影砂に灼き

炎ゆる波とがりて白き線となれり

巌群の乾きてくらし朱夏の昼

洋傘の柄をつたふさみだれ腕をつたふ

洋傘かしげ梅雨のひとかげ燈をよぎる

さみだれの虧けたる月を束の間に

洋傘裏の見つしげき雨を行く

梅雨はげし枕を胸にあてて読む

落潮の迅さ夕焼濃かりけり

高昇る夏日の浜を漕ぎいでぬ

こくこくと牛乳飲む朝を雲灼くる

向日葵や漁婦の乳房の垂れ下り

夜光蟲針のごとしや潮流れ

晩涼の砂は雲母をしづませぬ

繭車ゆらと緑蔭をひいて出づ

日焼よき渥美乙女とバスに乗る