さみだるる夜の山手線森へひびき
港通り日覆はやめつつ海青し
かうかうと蝉鳴き潮迫門に寄す
身じろがぬ蜥蜴と海と紺青に
灼け浜に下り蝉声をわすれたり
さみだれの一燈長き坂を守り
苫かけて北国船は梅雨に堪ふ
帽白く初夏の樹蔭にこどもゐつ
坂に見る埠頭夕焼けてゐし晩夏
梅雨見つめをればうしろに妻も立つ
人の言聞きをるや火蛾にまつはられ
嵐めく青葉見つめて汗垂れゐき
青芒白日煙草さへ忘れ
避暑宿へひかりつづける砂のあり
駆くる子にどこまでも夏の水平線
向日葵うしろに蹠の砂かわくまで
舟やれば赫き藻なびく晩夏なり
夏三日月遊びの群に子を探す
夕焼へ叱りすぎたる子の手執り
青葉邃く道をかくすに誘はれぬ
青葉揺れうごく光りと影に覚む
朴咲くやベンチに眠るひとを見過ぐ
緑蔭の赤子の欠伸母にうつりぬ
雲にどよむ正午のサイレン朴咲けり
緑蔭に合はす時計の遅れゐぬ