夏萩やすいすい夕日通り抜け
石佛に山繭みどり鳥過ぎぬ
半身を草に石佛蝉の空
仏の裾夕焼に毀れざる空蝉
修那羅より降りきし鴉夏桑に
蝉声を冠着越えの汽笛消す
雷一度とどろく青嶺青照りに
炎天に匂はんばかり山上湖
夏雲たつ山は越後ぞ鷹舞へり
吊橋を渡る夕立の濡らせしを
山深く夏木仰げば葉落ちくる
旅のあと昼寝に生を養へり
菖蒲葺く千住は橋にはじまれり
ひとり漕ぐ蜑に湖北の吹流し
筍に月の出の黄のちらつけり
端居して闇にゐること無のごとし
甕の藍男の子の色よ牡丹咲く
吹流しより風来たる藍の甕
縞なして雨移るなり今年竹
泥鰌鍋のれんも白に替りけり
夏の星水楢は葉を重ねあひ
佛壇の前の昼寝や帰省のごと
夏蕨遠山見ゆるころ夕餉
立夏はや露ののぼれる水辺草
田が植わりむしろさびしや島の隅