葉がくれて見ゆる白さや梅雨の月 石鼎
早苗田の影のみだれや梅雨の月 石鼎
わが庭に椎の闇あり梅雨の月 青邨
梅雨の満月が本堂のうしろから 山頭火
梅雨の月巣ごもる鷺ぞ鳴きにけり 楸邨
梅雨の月巣ごもる鷺の真白きを 楸邨
梅雨の月白鷺羽搏つこと幽か 楸邨
黄色とてかくまで黄なる梅雨の月 石鼎
近山に奥嶺は梅雨の月盈ちぬ 蛇笏
ともしびもなく貨車とほる梅雨の月 青邨
梅雨の月城頭にあるを見て泊る 蕪城
梅雨の月黒檜に湧きし雲をいづ 秋櫻子
樅の芽を花とは見せつ梅雨の月 秋櫻子
梅雨の月いでぬ蛙のこゑの上 秋櫻子
梅雨の月大きくあかき星連れて 貞
梅雨の月明日食ふ米を問ひてねむる 楸邨
一握の米をたのみや梅雨の月 楸邨
家去れといはるる梅雨の月の中 楸邨
梅雨の月耳薄く幸また薄し 楸邨
梅雨の月てらすは樹下の魚の骨 信子
梅雨の月ありやとかざす掌に 楸邨
梅雨の月さし入りがたく谷深し 秋櫻子
梅雨月やじようじようとして蜂の巣に 龍太
梅雨の月べつとりとある村の情 龍太
大人の墓故山の梅雨の月とあり 秋櫻子
梅雨の月閉めわすれたる窓にかな 万太郎
土気吸ふて肺太らせぬ梅雨月夜 林火
更くる夜のひそかにうるむ梅雨の望 風生
僧房の障子あけあり梅雨月夜 林火