和歌と俳句

梅雨の月

葉がくれて見ゆる白さや梅雨の月 石鼎

早苗田の影のみだれや梅雨の月 石鼎

わが庭に椎の闇あり梅雨の月 青邨

梅雨の満月が本堂のうしろから 山頭火

梅雨の月巣ごもる鷺ぞ鳴きにけり 楸邨

梅雨の月巣ごもる鷺の真白きを 楸邨

梅雨の月白鷺羽搏つこと幽か 楸邨

黄色とてかくまで黄なる梅雨の月 石鼎

近山に奥嶺は梅雨の月盈ちぬ 蛇笏

梅雨の月をましぬ瑠璃光院光 青邨

ともしびもなく貨車とほる梅雨の月 青邨

梅雨の月城頭にあるを見て泊る 蕪城

梅雨の月黒檜に湧きし雲をいづ 秋櫻子

樅の芽を花とは見せつ梅雨の月 秋櫻子

梅雨の月いでぬ蛙のこゑの上 秋櫻子

梅雨の月大きくあかき星連れて 

梅雨の月明日食ふ米を問ひてねむる 楸邨

一握の米をたのみや梅雨の月 楸邨

家去れといはるる梅雨の月の中 楸邨

梅雨の月耳薄く幸また薄し 楸邨

梅雨の月てらすは樹下の魚の骨 信子

梅雨の月ありやとかざす掌に 楸邨

梅雨の月さし入りがたく谷深し 秋櫻子

梅雨月やじようじようとして蜂の巣に 龍太

梅雨の月べつとりとある村の情 龍太

大人の墓故山の梅雨の月とあり 秋櫻子

梅雨の月閉めわすれたる窓にかな 万太郎

土気吸ふて肺太らせぬ梅雨月夜 林火

更くる夜のひそかにうるむ梅雨の望 風生

僧房の障子あけあり梅雨月夜 林火