ただ一人夏野の墓のクルス立つ
万緑の中さやさやと楓あり
虹高く書閣の乙女これを見る
二重窓小窓をもてり向日葵黄
母の顔道辺の蓮の花に見き
噴水の水のいただき夕焼に
狩勝の蕗原奔る水見たり
橋かける独木かついで田植季
梅雨の月光をましぬ瑠璃光院
ともしびもなく貨車とほる梅雨の月
かの瀑布みどりの草の山に落つ
雲の中瀧かがやきて音もなし
ハンケチを濡らし泉を去りゆけり
女湯はいつもさびしやほととぎす
あいさつに女将が来るや閑古鳥
遠山のくつがへるさま郭公鳴く
週末の牧師旅にあり麦の秋
沙羅の花もうおしまひや屋根に散り
五菩薩のみな観世音若葉冷
田掻牛観世音寺の鐘を聞く