簾おろし天の橋立うすくなる
蚊のとまる顱頂をたたき庭案内
流れ入り流れ去る水苔の花
ハンモツク海山遠く釣りにけり
沈みゆく海月みづいろとなりて消ゆ
傘すぼめ傘ひらき海月去りてゆく
安南に日は落ちてゆく籘椅子に
安南の国夕焼す薔薇とこそ
夕焼けのさめゆけばはやいなびかり
枝鳴らし下りくる猿や夕涼し
夕立に濡れてはかはく四迷の碑
仏桑花濡れて墓かはく夕立晴
新緑やたへにも白き琴弾く像
女王守る武人群像照る若葉
夏は来ぬ人はにほへりバラとリラと
白樺の若葉挿すならひ降臨祭
芍薬は降臨祭花市にひさぐ
学徒われ降臨祭麦酒ささげ飲む
協会の鐘が鳴りつつ夕立す
枕辺の薔薇くれなゐに白夜なる
明け易きよべ裾ひきし女はも
夏は来ぬ北の港に薔薇咲きて
海港に薔薇咲き人はうすものを
キリストに向日葵あげて巷の中
キリストに挿せし向日葵のみ新た