葭切や葭の中なる高蓮
うすものの重り合ひて濃むらさき
芍薬や雨にくづれて八方に
新緑や空わたりゆく蝶々かな
一駅を汽車に乗りたる早苗とり
ひるがほや河童ヶ淵に雨そそぐ
維好日牡丹の客の重りぬ
まだ早き牡丹ばたけをひとめぐり
凌霄花落ちてかかるや松の上
紫陽花や朽ちたるごとく家ありぬ
水の音聞ゆる室やあらひ鯉
風向に萍の花しづもりぬ
病葉をおとしおとして梅古木
まひまひの水の廣さや花菖蒲
葉一枚折れてうかべる花菖蒲
牡丹の崩れんとするに蝶来り
山里や植田しづかに閑古鳥
五月雨の水につと見る鯰かな
京の宿簾の外の人通り
縁台を濡らして過ぎし夕立かな
どくだみの花咲くと洗ふ硯かな
まつしまの駅のともしの火取虫