和歌と俳句

狩勝峠

茂吉
狩勝へ いまだほどある 行方にし おもおもと雲とづる山あり

土屋文明
山を焼く煙は天にうづまきて春の日光の國かぎりなし

土屋文明
遙かには國の中らを川ゆくか長々として赤きくえ岸

土屋文明
ふりさけて曇れる空かところどころ野をやく煙に日はかがやきて

土屋文明
狩勝を下りて久しき國の原山女鮓うる驛にとまりぬ

なだらかなの丘なり汽車登る 虚子

なびく機罐車が曳く四十輛 楸邨

狩勝を下りきし駅の魂迎へ 楸邨

狩勝のまひるの霧の大鴉 楸邨

虎枝や狩勝峠汽車徐行 立子

狩勝の蕗原奔る水見たり 青邨