和歌と俳句

石狩

啄木
石狩の美国といへる停車場の 柵に乾してありし 赤き布片かな

啄木
みぞれ降る 石狩の野の汽車に読みし ツルゲエネフの物語かな

石狩の国原焼くる夜汽車かな 風生

茂吉
夏ふけし 石狩のくにの あかつきは 雲はれし山 雲のゐるやま

茂吉
兄も吾も 心したしく もの言ひつ 石狩川の みづに手ひたす

茂吉
降りつぎし ひと夜の雨の 晴れしまの 石狩川は 浪だちながる

流木のくつがへりをり出水あと 櫻坡子

秋耕の馬に銃創ありにけり 櫻坡子

秋耕の馬たくましや石狩野 櫻坡子

石狩の岩魚を炙る石積めり かな女

花蕗をわけて石狩川となれり かな女

浜菅や夕川波に風つのり 秋櫻子

浜菅や燈台濡らす沖の雨 秋櫻子

川波の海より荒し夏千鳥 秋櫻子

浜昼顔大河の波にうちふるふ 秋櫻子

土屋文明
岸ひくき水の親しさ石狩の雪解の時に吾は来にけり

土屋文明
ま向ひより落ち来る雪代みなぎらふ萌黄だつ柳の川原の中

鵜が翔ける大石狩の夕焼空 蛇笏

浜菅をふみゆく旅愁かぎりなし 風生

石狩の荒波河畔牧馬肥ゆ 爽雨