和歌と俳句

函館

啄木
函館の床屋の弟子を おもひ出でぬ 耳剃らせるがこころよかりし

啄木
函館の青柳町こそかなしけれ 友の恋歌 矢ぐるまの花

啄木
しらなみの寄せて騒げる 函館の大森浜に 思ひしことども

啄木
函館の臥牛の山の半腹の 碑の漢詩も なかば忘れぬ

土屋文明
青芽たつクローバーの原に風鋭し日入りて鎖す五稜郭のあと

函館は松に雨降る霊迎 桂郎

茄子漬や雲ゆたかにて噴火湾 楸邨

漁師の娘日焼眉目よし烏とぶ 虚子

噴火湾かすむ大潮おとをたえ 蛇笏

函館とわれから名乗り畳替中 汀女