和歌と俳句

札幌

啄木
札幌に かの秋われの持てゆきし しかして今も持てるかなしみ

啄木
アカシヤの街にポプラに 秋の風 吹くがかなしと日記に残れり

啄木
しんとして幅広き街の 秋の夜の 玉蜀黍の焼くるにほひよ

啄木
わが宿の姉と妹のいさかひに 初夜過ぎゆきし 札幌の雨

九条まで町の木立や飛ぶ  碧梧桐

千樫
雨ふれば今日いとまあり札幌の大き通りを下駄はきあゆむ

千樫
廣き街の宵ひやびやし町かどに唐もろこしを焼きてうり居り

道庁や雪墜る音の昼餐どき 誓子

門入れば直ぐ閑古鳥居る木あり 普羅

札幌の放送局や羽蟻の夜 立子

アカシヤの幹に触れ虫を売るに立つ 楸邨

理学部は薫風楡の大樹陰 虚子

楡新樹諸君は学徒我は老い 虚子

初夏をなみポプラ彎りて北海道 蛇笏

秋風や街にはだかる椴大樹 風生

雛芥子に秋風めきて日の当る 虚子

馬肥ゆる牧を荘厳してサイロ 爽雨

天高きサイロあふぐに窓真闇 爽雨

花野なるサイロも糧の満つるころ 爽雨