和歌と俳句

古泉千樫

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露じめる雑木林の落葉ふみさびしき足音ききつつあゆむ

元日の昼たけにけり火鉢によるわが掌を見て居り吾れは

梅雨の雲白くおりゐて見の親し船の舳むかふ真鶴岬

さみだれのあめふりけぶり朝あやし白き海鳥庭に来て居り

昼ふかみさみだれやまずひとり来ていで湯の湯槽汲みかへにけり

夕ちかみ梅雨明りして湯の村の人ごゑ物の音しづかにきこゆ

眺めゐる九十九谷にいくすぢの夕けのけむり立ちにけるかも

山の町夕冷えはやしをみな子のになひ行く水みちに垂りつつ

あらし雲山をおほへり群れかへる黒きからすのおもたき羽音

あら野来てさびしき町を過ぎしかば津軽の海は目に青く見ゆ

青森のみなとの宿の宵ふけて庭木にさわぐ鳥のこゑかも

雨ふれば今日いとまあり札幌の大き通りを下駄はきあゆむ

廣き街の宵ひやびやし町かどに唐もろこしを焼きてうり居り

遠くゐて悔いざらめやもちちのみの父のいのちの何ぞすみやけき

ふるさとの父のいのちはあらなくに道に一夜をやどりつるかも

闇をゆする浪のとどろきとどととしてわが胸痛し夜いまだ深し

雨ながらこれの峠にきたりけりわが村かたは霧ただに白し

かへりきてわが家の屋根見ゆらくに涙あふれてとどめかねつも

山へゆく村の小みちのいちじるくよくなれるだに父のしぬばゆ

おのがじし生くる命をうべなひて遠くあそべるわれらをゆるしし

わくらばにわれら肉親あひ寄りて幾日は過ぎぬ父あらぬ家に

土ふかく父の柩をおさめまつりわがおとしたる土くれの音

わが母の今日は出で立ち茶を摘むにわれもわが兒も出でて摘みつつ

まかがよふ光のなかにわがうから今日は相寄り茶を摘みにけり


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