和歌と俳句

万葉集の東歌

夏麻引く海上潟の沖つ洲に舟は留めむさ夜更けにけり

馬来田の嶺ろの笹葉の露霜の濡れて我来なば汝は恋ふばぞも

馬来田の嶺ろに隠り居かくだにも国の遠かば汝が目欲りせむ


葛飾の真間の浦廻を漕ぐ舟の舟人騒く波立つらしも

葛飾の真間の手児名をまことかも我れに寄すとふ真間の手児名を

葛飾の真間の手児名がありしかば真間のおすひに波もとどろに

にほ鳥の葛飾早稲をにへすともその愛しきを外に立てめやも

足の音せず行かむ駒もが葛飾の真間の継橋やまず通はむ


筑波嶺の新桑繭の衣はあれど君が御衣しあやに着欲しも

筑波嶺に雪かも降らるいなをかも愛しき子ろが布乾さるかも

筑波嶺の嶺るに霞居過ぎかてに息づく君を率寝て遣らさね

妹が門いや遠そきぬ筑波山隠れぬほとに袖は振りてな

筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみを泣きわたりなむ逢ふとはなしに

筑波嶺にそがひに見ゆる葦穂山悪しかるとがもさね見えなくに

筑波嶺の岩もとどろに落つる水よにもたゆらに我が思はなくに

筑波嶺のをてもこのもに守部据ゑ母い守れども魂ぞ合ひにける

さ衣の小筑波嶺ろの山の崎忘ら来ばこそ汝を懸けなはめ

小筑波の嶺ろに月立し間夜はさはだなりぬをまた寝てむかも

小筑波の茂き木の間よ立つ鳥の目ゆか汝を見むさ寝ざらなくに

常陸なる浪逆の海の玉藻こそ引けば絶えすれあどか絶えせむ