和歌と俳句

前田普羅

罌粟坊主雨を湛へてこぼしけり

咲きやんで雛罌粟雨に打たれ居り

白罌粟の花より高し罌粟坊主

方寸の壺にあふるる新茶かな

サラサラと和尚がこぼす新茶かな

夏蜜柑肩にあたるをもがんとす

浜名湖や五月曇りに山並ぶ

青あらし天守に登る草履あり

京に来て食はんと思ふ夏菜かな

郭公の翔りぬけたる桐の花

門入れば直ぐ閑古鳥居る木あり

陸中の田植を見たり帰へらなむ

夏草を毟るトマトのほとりかな

晒井の水を童女は渡り行く

井浚ひの始まる萩を束ねけり

空蝉のふんばつて居て壊はれけり

風おちて静かな田植月夜かな

蹄鉄かへて馬があるけり田植風

芍薬の蕾の玉の赤二つ

梅雨晴や樹を折り遊ぶ女学生

斑猫の王が交りて山しづか

頂に鷺がとまりぬ梅雨の松

葛少し芒にからみ梅雨あがる

湖に夏草を刈り落しけり