和歌と俳句

青嵐

千年の礎を吹く青嵐 亜浪

青嵐や主従あきし麦の飯 普羅

浴泉や青嵐して箒川 秋櫻子

満目の流材のうごき青嵐 橙黄子

宙に舞ふ干潟の鳶や青嵐 石鼎

青嵐梅雨曇るより吹きそめし 石鼎

青嵐天守に登る草履あり 普羅

大楠の枝から枝へ青あらし 山頭火

青嵐緑へ落つる雲の影 石鼎

森越えて次の森越す青嵐 石鼎

厠出て面輪明るし青嵐 石鼎

漏れ日騒ぐ大樹の幹や青嵐 石鼎

犬つれて歩み疲れぬ青あらし 辰之助

青あらし電車の音と家に来る 誓子

浮き出ては消え去る雲や青嵐 石鼎

鳶やがてひだりへ流れ青嵐 石鼎

空ふかみうるみうるほひ青嵐 石鼎

雀枝に来やうしろより青嵐 石鼎

落ち毛虫いそぎにぐるよ青嵐 石鼎

石を匐ふ毛虫美事や青嵐 石鼎

前梶の棹ふりたわむ青あらし 草堂

青あらし甍のひまに湧きあふる 楸邨

泣きし子も蟇も真青ぞ青嵐 楸邨

青嵐樫の翠はいとけなき 友二

縁台のうすべりとんで青嵐 立子

青嵐文字歩きくる如くなり 楸邨

呼吸ととのふる間も青嵐吹きつぎ来る 林火

吾子の忌の袂が重き青嵐 知世子

夫ゆきて十日ひと夜の青嵐 知世子

夕雲のかたち変へつゝ青あらし 信子