和歌と俳句

前田普羅

葭切や郭公や梅雨の風に飛ぶ

日もすがら木を伐る響梅雨の山

梅雨の海静かに岩をぬらしけり

梅雨晴や鵜の渡り居る輪島崎

雫してわれからぬれぬ梅雨の松

梅雨の川芦一本にまがりけり

門前の二本の柿や梅雨さわぐ

蝶来るや梅雨の晴間の五葉松

菱刈りの面を叩く夕立かな

日盛や門前に打つ箔砧

人の面を流るる涙五月闇

しらじらと明けて影濃し旱雲

朝夕瓜もみ食ふ旱かな

夏山や吊橋かけて飛騨に入る

浴衣着て帯胸高や弱法師

果物の汁の飛びたる浴衣かな

に人肌見えて尊とけれ

祭過ぎぬ木を挽く響隣より

先哲の墓に詣るや夏帽子

酢の石金輪際に据ゑにけり

麦飯をぼろぼろ食ひて涼しけれ

立山のかぶさる町や水を打つ

松の木に庭師来て居り昼寝

蚊の落つる音の嬉しき油団哉