さしのぞく古井の水もぬるみけり
春泥の乾きそめたる柳かな
一瓣のはらりと解けし辛夷かな
蓮如忌やをさな覚えの御文章
かたまりて氷のひまの田芹かな
ほのぼのと芽ぐむけしきの櫟山
大風の中の鶯聞こえをり
縁端にさしおく筆や人丸忌
草餅や足もとに着く渡し舟
海苔舟に埋まつてをる細江かな
百千鳥静が墓とつたへけり
御扉開くことなき木の芽かな
一もとの姥子の宿の遅ざくら
むさし野の古へよりの藤の茶屋
落椿ふむ外はなき径かな
静かにも人あちこちす馬酔木かな
初花も落葉松の芽もきのふけふ
色に出て落葉松の芽のあはあはし
山ざくら落葉松の芽に散りかかり
落葉松の芽は花よりもほのぼのと
蕗の薹高く茂れる苫屋かな
道ばたの義経神社蕗の薹
石狩の国原焼くる夜汽車かな
蕗の薹野川溢れて溺れをり
愛別といふ邑過ぎぬ残る雪