大火事に明るき空や手水鉢
粕汁や蓋を浮かせて沸きたちし
原宿に今は住みつき霜柱
藪柑子に燈籠の笠の雪雫
藪柑子実こぼれし萼のありにけり
河下に藪枯れつづく果もなし
山々や色を変へつつ枯れにけり
これぞといふ樹もなき庭や冬ざるる
積む雪にきたなくはねし雪雫
簇りて堅き蕾や冬椿
一つ咲く冬の椿を切りにけり
消えまじき懐炉をしかと包みけり
短日の街はや夜や退庁す
雪嶺をかへりに立てり渡舟中
嫂や炬燵に遠く子を膝に
日向ぼこ笑ひくづれて散りにけり
少年にとり囲まれて日向ぼこ
この莚敷きつぱなしや日向ぼこ
探梅の渡舟をかへし戻りかな
氷上や映り交はして二焚火
実南天二段に垂れて真赤かな
炭鉱や四囲の枯山うらうらと