銀屏に魍魎あそぶ冬燈
芝枯れて染めたるごとき池を抱く
ほうほうと楢山枯るる寒日和
逗留や二輪久しき寒椿
大寒の寂と瓊瑶世界かな
俳諧の欲の飽くなき熊手買ふ
冬紅葉しづかに人を歩ましむ
老二人塵もあげずに避寒宿
道ばたの石一つさへ時雨さび
柳条の雨のごときは春を待つ
寂光を湛へ沼菅枯れわたる
絵葉書を売る娘の日焼寒日和
美しく芒の枯るる仔細かな
朴落葉鋼の硬さもて乾反る
蓮枯るるすべて終るといふ相
太刀魚の刃に冬三日月の微光憑く
枯柳蕭条として疎なりけり
きのふわがみし足迹冬渚
ひさかきの実の黒曜も寒の内
ひりひりと寒の悪意の刺しにけり
枯野道橋渡るときやや高まる
枯萱を残すこころは春を待つ
あはあはと心の翳と冬の雲
古径を寒禽ちちとみちびける
悴みて祖翁に拈華旅遠く
うづくまる前肢そろひ狸藁塚