つばくらめ斯くまで並ぶことのあり
海風にとまり燕のゆれやまず
飛び溜る燕の声を打あふぎ
沈丁の四五花はぢけてひらきけり
えごの花ながれ溜ればにほひけり
沈みたるえごや花びら透きとほり
木蓮の花のなげきはただ高く
絶え間なき雨木蓮の花に沁むや
黄楊の花ふたつ寄りそひ流れくる
ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道
崖椿白き幹をば打隠し
みな袖を胸にかさねし花見かな
妹の嫁ぎて四月永かりき
菜の花や夕映えの顔物を云ふ
おん顔の三十路人なる寝釈迦かな
地を指せる御手より甘茶おちにけり
猫の恋後夜かけて父の墓標書く
切岸へ出ねば紫雲英の大地かな
蕨折れば岩は岩にと帰しにけり
春山に木樵の居りて小石落つ
谷空に吊り出してあり雲雀籠
畦雲雀夕波あかりに見えにけり
蒲公英に千切つてこぼす草葉かな
大学生おほかた貧し雁帰る