和歌と俳句

中村草田男

長子

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つばくらめ斯くまで並ぶことのあり

海風にとまり燕のゆれやまず

飛び溜る燕の声を打あふぎ

沈丁の四五花はぢけてひらきけり

えごの花ながれ溜ればにほひけり

沈みたるえごや花びら透きとほり

木蓮の花のなげきはただ高く

絶え間なき雨木蓮の花に沁むや

黄楊の花ふたつ寄りそひ流れくる

ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽

椿白き幹をば打隠し

みな袖を胸にかさねし花見かな

妹の嫁ぎて四月永かりき

菜の花や夕映えの顔物を云ふ

おん顔の三十路人なる寝釈迦かな

地を指せる御手より甘茶おちにけり

猫の恋後夜かけて父の墓標書く

切岸へ出ねば紫雲英の大地かな

折れば岩は岩にと帰しにけり

春山に木樵の居りて小石落つ

谷空に吊り出してあり雲雀籠

雲雀夕波あかりに見えにけり

蒲公英に千切つてこぼす草葉かな

大学生おほかた貧し雁帰る

校塔に鳩多き日や卒業