初蚊帳のしみじみ青き逢瀬かな 草城
月さして山水浮ぶ絵蚊帳かな 草城
蚊帳越しの灯の明るさに読み更くる 草城
覚めきらぬ頬に風の蚊帳触るるなり 草城
蚊帳の裾うなじを伸べてくぐりけり 草城
清風の闇に白蚊帳ほのかなる 草城
京泊り大雨の蚊帳を起きやらず 播水
夜船待つひとまどろみに蚊帳くらし 秋櫻子
背がつりし一手は高し蚊帳はじめ 草城
寝おくれて妻のかかぐる蚊帳の裾 草城
独り寝の蚊帳の四隅を吊りめぐる 草城
蚊帳を吊る影ありければ道を問ふ 爽雨
大蚊帳の裾静かなる燈かな 石鼎
雨の音よしと思へる蚊帳かな 風生
古蚊帳に我が身も古りて了ひけり 淡路女
蚊帳越しの電燈の玉見て居りぬ 草田男
蚊帳へくる故郷の町の薄あかり 草田男
灯を消して蚊帳のみどりは失せにけり 草城
新しきうすき大蚊帳を高くつり 石鼎
すがたみに触りてつらるる蚊帳かな 麦南
一日のかろき悔ある蚊帳かな 淡路女
蚊火尽きむ更けむとおもひ蚊帳を吊る 悌二郎
伊達巻の胴のすらりと蚊帳を吊る 草城
青蚊帳をふちどる紅のなまめける 草城
灯を消して蚊帳のみどりは失せにけり 草城
水差のほのかな光蚊帳の闇 草城
蛍来て妹背の蚊帳に灯しけり 草城
指しやぶる音すきずきと白き蚊帳 鳳作
指しやぶる瞳のしずけさに蚊帳垂る 鳳作