五月雨のうたかたをみて遊びけり
梧桐の葉かげにかくれ夏の月
他愛なき顔して居りぬ昼寝人
病篤き人に風鈴はづしけり
逢ふほどに親しさまさる団扇かな
小さき目を据ゑて目高の居りにけり
さりげなくゐてもの思ふ端居かな
古妻や暑さかまけの束ね髪
古蚊帳に我が身も古りて了ひけり
夾竹桃の暑さに馴れて暮しけり
ひとりゐて梅雨をたのしむ思ひあり
夕涼み門にも風のなかりけり
夕立もやみたる頃の迎へ傘
土用灸こらゆる涙ぽろぽろと
夏羽織短き紐のそらほどけ
十薬や古る花は葉のかくしぬる
梧桐や夏めく宵の一つ星
風鈴の鳴りまつはるや思ひごと
舟遊びあやまちぬらす袂かな
生れたる蜻蛉すはや飛び去れる
古池の冷たき水に浮巣かな
一心にともして飛べる蛍かな