和歌と俳句

高橋淡路女

五月雨のうたかたをみて遊びけり

梧桐の葉かげにかくれ夏の月

他愛なき顔して居りぬ昼寝

病篤き人に風鈴はづしけり

逢ふほどに親しさまさる団扇かな

小さき目を据ゑて目高の居りにけり

さりげなくゐてもの思ふ端居かな

古妻や暑さかまけの束ね髪

古蚊帳に我が身も古りて了ひけり

夾竹桃の暑さに馴れて暮しけり

ひとりゐて梅雨をたのしむ思ひあり

夕涼み門にも風のなかりけり

夕立もやみたる頃の迎へ傘

土用灸こらゆる涙ぽろぽろと

夏羽織短き紐のそらほどけ

十薬や古る花は葉のかくしぬる

梧桐や夏めく宵の一つ星

風鈴の鳴りまつはるや思ひごと

舟遊びあやまちぬらす袂かな

生れたる蜻蛉すはや飛び去れる

古池の冷たき水に浮巣かな

一心にともして飛べるかな