くづをれて団扇づかひの老尼かな 虚子
麦の穂を描きて白き団扇かな 夜半
落語聞く静かに団扇使ひつつ 虚子
うち笑ひ団扇づかひのせはしなき 虚子
桟橋に出て夕凪の団扇かな 秋櫻子
乱れたる団扇かさねて泊りけり かな女
風の月にさびしさ湧きし団扇かな 石鼎
とりいでて団扇も去年の匂ひかな 月二郎
逢ふほどに親しさまさる団扇かな 淡路女
柄を立てて吹飛んで来る団扇かな たかし
あほぎあうて笑へる子等の団扇かな 石鼎
どこやらに団扇の音や宵寝町 石鼎
はたはたとくちなし染の団扇かな 喜舟
団扇絵のよきをえらびて風おくる 鴻村
にじみたる真赤なる繪や安団扇 虚子
幼より憂ひしる子の団扇かな 石鼎
急がしく煽ぐ団扇の紅は浮く 虚子
用ひざる団扇を立つる老の膝 風生
夢をのみ語りつづけつ団扇手に 万太郎
静に居団扇の風もたまに好し 虚子
草の上おきし団扇の色浮かみ 蕪城
手に当る五色団扇の赤を取る 虚子
こち見る人の団扇の動き止み 虚子
怪談に落ちの柄のつく団扇かな 万太郎
奥の間の暗きに使ふ団扇かな 汀女
貧乏に疲れきつたる団扇かな 立子
あきくさを描きし団扇ちらばれる 万太郎
白団扇旅寝の妻の胸の上に 林火