いまは花野決壊の傷天に懸け
わが比叡比良と嶺わかつ秋の空
はるかに光る秋の川来るか行くか
不断燈鬱々夏を遣り過す
北谷に立てば北空法師蝉
仏燈や火蛾の翅粉をただよはす
老いて醜き白川女頭に秋草
白露行身袖ひつかく有刺線
石窟仏蜂の出入に有刺線
秋晴より蜂がかへり来石窟佛
石窟仏秋蚊に女血たつぷり
なきがらの蜂に黄の縞黒の縞
秋晴に仏の石窟口ひらく
岬に土ありて藷づる引けば藷
礁の道女藷担く肩かへては
子の干柿口より享けて口濡れる
廃馬ならず花野に手綱ひきずつて
踏みゆるめばすぐに低音稲扱機
豊年や走れば負ひ子四肢をどる
三つ星がオリオン緊める新ラ刈田
乳母車坂下りきつて秋天下
噴水を白らめ川霧とどこほる