和歌と俳句

星野立子

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住みつけるさましみじみと秋灯下

秋晴や教会見えて来れば町

激情を日焼の顔の皺に見し

望郷や土塀コスモス咲き乱れ

一世はふるさと讃へ秋讃へ

旅今日も西へ西へと秋の暮

飛行機に夜寒朝寒旅かなし

蔀戸の外秋晴の日本海

川霧や犬通りてもゆるゝ橋

くぐり戸を開け閉むる音十三夜

夜に訪ふことはめづらし走馬燈

紅芙蓉白芙蓉又紅芙蓉

秋晴や色よく出来し陶を掌に

秋晴や小声で話しゐてきこえ

菊日和美しき日を鏤めぬ

銀河濃し枕に頬を埋め寝る

秋簾とろりたらりと懸りたり

高音ふたたび三たび鵙高音

海浜の今宵暖か十三夜

蜩や使またせて書く返事

七夕や父口ずさむ祖母の唄

花芙蓉今宵火星は近づくと

人の世の秋やしあはせふしあはせ

大いなる葉よろひ萩の蓑蟲よ

秋晴や小さき方の孫抱きて

ききと人の心をかき乱し