和歌と俳句

星野立子

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今朝秋や母に代りて佛守る

白露や大たわみせし萩の枝

月代やまだ裏庭に働ける

糸瓜忌や子規の話を母に聞く

もののけの如くふくれて月の波

鎌倉やいつもどこかに鉦叩

火の色の美しかりし秋の暮

朝寒の起きねばならぬ時計鳴る

老柳の山廬秋風吹きめぐり

穂に出でしばかりの芒山の雨

朝顔や藁屋根古び人睦び

名月の夜ぞ外つ国に書く手紙

白萩ははね紅萩はうづくまり

供華もちて誘ひ合せて子規忌かな

秋水に譬へて話つゞけゆく

木犀に帯締めながら目をやりぬ

陰暦の九月十五夜横川に居

壽福寺も今宵さぞやと峰の月

秋晴や主婦に楽しき句会あり

君一人我も一人や秋の暮

新涼や約束の不意の客

高原の戸に物売りや新豆腐

又しても秋風太く降つて居り

一束の線香分けあひ露の墓

腹立つははしたなきこと鉦叩