銀漢にわが家小暗く灯りをり
高原の流星しきりなる夜かな
逢ふよしもなかりし人と子規忌かな
頁繰る如く秋晴今日も又
蜩のつと鳴きだしぬ暦見る
ラヂオつと消され秋風残りけり
葺きたての藁屋根月をはねとばし
秋燈のま下にくぎる小衝立
障子しめて四方の紅葉を感じをり
残暑とはショートパンツの老人よ
秋晴の娘は洗濯に母外出
爽かに振舞ふ人に気おくれし
月よしと上げし面のけがれなく
絵はがきにふと似て月の大佛
吾も老いぬ娘のかしぎたる菌飯
秋晴のがたと日落ちぬ気ざはしや
年寄りし姉妹となりぬ菊枕
風吹けば全く秋や山羊放ち
霧雨か霧かと葉音きき澄ます
旅いゆくしほからとんぼ赤とんぼ
来宮は木の実降る宮淋しき宮
町残暑明日何あるも人知らず
相逢ふははじめて法師蝉の森
新涼や芝這ふ如く雨到る