雲雀鳴き越軍渡河の跡空し
逍遥す端午雲ゐる海津城
曇れども風颯々の山わらび
花過ぎし杏の樹下は蕗ばかり
雨の渓一夜ににごる山ざくら
可愛岳を蝶群れのぼる花卯つ木
可愛岳攀づる径なし道をしへ
夕焼けの噴煙凝りて飛燕落つ
薫風の床几火山灰降るぢやんぼ餅
桜島とどろき噴けり旧端午
立ちめぐる木々はあれども水芭蕉
新緑や殊に水際のななかまど
田植笠湖光まぶしとかたむけて
山菜を負ひ来し顔も霧しづく
卯の花や判官主従のこす笈
卯の花やみちのくぶりの大鐙
信夫山いでて鳴き来る時鳥
山葡萄いろづく霧に至佛岳
山毛欅太く白樺まれに秋の蝶
朝晴れて唐黍積めり野菜市
わざをぎの盆の湯治や鳳仙花
鮎焼きて老を敬ふけむり立つ
熟睡翁敬ふ朝湯沸きにけり
菊枕夢彩雲に入りにけり
水澄むや俄にはしる鰡の波
掛稲をとるや芒の余呉の湖
姉川ときくに虫の音ただならず
雨ながら紅葉を雲に小谷城