和歌と俳句

羽子板 羽子 追羽子

やり羽子や油のやうな京言葉 虚子

東山静かに羽子の舞落ちぬ 虚子

羽子つくやひろびろとある田圃中 花蓑

羽子板や羽織着せゐる梅暦 喜舟

遣羽子や両隣から御内宝 喜舟

羽子板や贔屓の外の羽左衛門 喜舟

追羽子の町に出てゐる杜氏かな 夜半

落ち羽子に潮の穂さきの走りて来 誓子

遣羽子や海原かくすさうび垣 誓子

繋りたる鞆の港や羽子日和 誓子

羽子板や母が贔屓の歌右衛門 風生

羽根つくや穴八幡はさびしけれ 青邨

杖ついて祖母門にあり羽子つく 悌二郎

沖浪のかゞやき照るや羽子日和 悌二郎

わが宿の姉いもうとの羽子の音 夜半

遣羽子や船渠かすみて見ゆる坂 誓子

追羽子に舁きゆく鮫の潮垂りぬ 秋櫻子

追羽子や音朗らかの庭隣り 秋櫻子

羽子をつく娘と孫のおない同志 虚子

大山の根雲もとれぬ羽子日和 爽雨

羽子板や碇知盛恐しき 喜舟

遣羽子や恋しり貌に打返し 喜舟

つく羽子の静に高し誰やらん 虚子

大露地の羽子つくなかを抜け来り 万太郎

羽子板の役者の顔はみな長し 青邨

大空の羽子赤く叉青く叉 青畝

病人の故人となるや羽子の春 青畝

羽子板の裏絵さびしや竹に月 鷹女

羽子板のつきくぼめたる裏絵かな 鷹女

羽子板の裏絵消ぬべくなりにけり 鷹女

遣羽子や午下の温泉宿の長廊下 石鼎

梅の木と梅の木の間羽子をつく 石鼎

羽子つくや夕いよいよ雪もよひ 立子

縁に置く代りの羽子の赤ぼかし 立子

大空に羽子の白妙とどまれり 虚子

つく羽子の同じ高さに姉妹 虚子

遣羽子や大戸卸して昼の町 石鼎

はしきよし鈴の鳴り添う夜光羽子 淡路女

追羽子やけふも荒布を干すほとり 秋櫻子

お愛想の遣羽子遂に面白し みどり女

突き上げし羽子の流るゝ東風 淡路女

同じ色同じ高さに羽子の春 青畝

褄とりて独り静に羽子をつく 虚子

追羽子のいづれも上手姉妹 虚子

羽子板も法の盾かや観世音 茅舎

羽子の児に熔岩の山垣おし迫り 爽雨

羽子板を抱いて門より出ぬ女の子 花蓑

在りし世の羽子板飾り隠れ栖 たかし

飾らるる羽子板も古り妹も古りぬ たかし

羽子板を犬咥へ来し芝生かな 虚子

獣園の日最中にして羽子の音 蛇笏

遣羽子にものいふ眼を見とりけり 蛇笏

小説を立てならべたる上に羽子 素十

羽子板の写楽うつしや我も欲し 夜半

浦波にただよふ羽子のありにけり 麦南

朝夕の潮の遠音も羽子日和 麦南

面白し雨のごとくに羽子の音 花蓑

午後ぬくく酪農の娘が羽子あそび 蛇笏

追羽子や背にからからと鉄兜 楸邨