和歌と俳句

高橋淡路女

初東風や桟橋渡る賽者づれ

旅の湯に解く丸帯や松の内

道場に女下駄あり初稽古

はしきよし鈴の鳴り添う夜光羽子

寶恵籠やくゝり添へたる梅一枝

年立ちて心静けき起居かな

句に生きて歳月古りぬ己が春

大鍋に炊きあふれけり薺粥

日のさしたふれこぼるゝ初湯かな

身の憂さやこもあごましるす初日記

初夢のはかなくたのし古衾

提げてゆく七草籠やお年玉

初髪や眉にほやかに富士額

突き上げし羽子の流るゝ東風

門松の笹の葉喰めり初荷馬

山畑や雪に打ち込む鍬始

草の戸や門辺に御形薺など

ほんだはら荒磯の匂ひなつかしき

お供へに歯朶のみどりのほの匂ふ

浅みどり春七草の小籠かな