はたはたやわぎもが肩を超えゆけり
雲仙の秋の草々妹が眼にも
妹と行けば漆の紅葉径に斜め
たづさふや竜胆折りし妹が手を
竜胆やここに陥ちたる山の径
道の上に大安日の蝗かな
船造るこだまは秋の稲佐山
秋の暮使徒虐殺の図にまみゆ
初瀬の駅獅子舞汽車を待てるかも
遣羽子や船渠かすみて見ゆる坂
くらがりに七賢人の屏風かな
大学の空の碧きに凧ひとつ
本堂のみ仏の燈も雛の宵
炭坑の汽車に乗り来て入学す
入学や昆布ほしたる学びの舎
塩田のゆふぐれとなる遍路かな
竹落葉ひらりと蝌斗の水の上
造らるる船にとびけり葭雀
廻廊を鹿の子が駆くる伽藍かな
水なぶる童の手あり施餓鬼舟
穢土の川葭青々と施餓鬼かな
施餓鬼川百千に塵と芥かな
ひんがしの日に照らされて走馬燈
嵯峨の駅納涼電車来てはかへす
扇風器大き翼をやすめたり
向日葵のまなこ瞠れる園生かな