深海に青き魚すめり走馬燈
走馬燈青女房の燃やしぬる
青海のめらめらと燃ゆ走馬燈
走馬燈地にうつされて燃えてゐる
七夕や旅をわが来し地獄村
七夕や真赭の地獄湧きたぎつ
七夕竹たぎつ地獄の辺に立てる
七夕や偏照光のさせる地獄
大旱牛頭馬頭に逢ふ地獄村
悪鬼ゐて地獄たぎらす大旱
大旱や泥泉地獄ふつふつと
地獄見て憤ろしも大旱
蟷螂の鋏ゆるめず蜂を食む
蜂舐ぶる舌やすめずに蟷螂
紅き帆の練習船の走馬燈
走馬燈船の上にも海を描く
舳のかるき舟に男女や走馬燈
走馬燈死にゆくふたり舟を漕ぐ
青潮の流れ著き走馬燈
蟷螂の生れて既に永とゐる
曾て世の男女の情や近松忌
さかりばに鉄骨立てり近松忌
法廷に指の悴む男女かな
悴みて囚徒抗ふこともなし
悴けたる四肢に鎖の鳴りにけり
足枷といふものはめて悴める
スケートの紐むすぶ間も逸りつつ
スケートの真顔なしつつたのしけれ
月食の夜を氷上に遊びけり